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社長ブログ アピロス誕生秘話(3)

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2019.08.16
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2つの事業



執筆者:社長 KEN

前回の記事:社長ブログ アピロス誕生秘話(2)

私は、起業を検討するようになった当初から「新しいコーティング技術、コーティング機械(生産財)の事業化」と、そのコーティング技術をコンシューマー用途に転用した「自社ブランドでのスマートフォン関連商品(消費財)の事業化」、2つの事業モデルを同時に立ち上げようと考えていました。

機械(生産財)の事業だけでは日銭を稼げないからです。

機械は、顧客の製品を製造するために使われる「生産財」です。 顧客は機械で製品を製造販売して利益をあげなければなりません。

従い、顧客からは性能、コスト、リードタイム、アフターサービス、企業の経営安定性などなど、非常に高度な技術力とバランスのとれた製造メーカーとしての総合力が求められます。

我々は数名でゼロから立ち上げる零細メーカーで、商品は1台数百万円〜数千万円、製造納期に数カ月から半年を要します。

従い、起業してから開発完了までに最低半年、受注・納品にも半年以上、どんなに短く見積もっても起業から1年は全く収入が得られません。

また、生産財は景気が悪くなったり、顧客の業績が悪くなると、まず真っ先に投資が止まります。そうなると売りたくても誰も買ってくれなくなります。食料や日用品のような必需品ではないからです。 また、定期的に必要なものでもありませんので、受注時期にムラがあります。定期購入する顧客もいません。

もちろん資本金を大きくし数年間は受注がなくても会社を継続させられれば良いですが、私の試算では初年度だけで70百万円が必要でした。
そして1-3年分の資金を自己資金と事業パートナーから調達することは厳しいだろうと見ていました。なぜなら、我々の事業は時流のITではなく伝統的な工業・機械製造業だからです。

たとえ1年目をしのいでも、その後も安定的に受注できる保証などどこにもなく、常に新しい顧客から新規受注をしていかなければなりません。All or Nothingの事業なのです。

起業時は商品である機械も存在せず、購入を確約してくれる顧客もいません。もしかしたら開発が失敗し何も商品がないということもあり得ます。

すなわち機械メーカーだけで起業したら、たちまち資金が枯渇し倒産するリスクがかなり高いということです。

私は20年近いキャリアのほとんどを機械事業に携わっており、その事業特性を理解していましたので、機械が売れない時でも日々収入、現金を得られる、安定的に事業を継続できる「消費財」商品が絶対に必要だと考えていました。

そして開発したのが「Fusso SmartPhone」という指紋防止コーティング商品です。当社にとって最初に発売した記念すべき商品で設立1ヶ月後の2011年12月24日に発売しました。

今では様々なスマホアクセサリーを製造販売していますが、たまに「どうして機械とスマホアクセサリーという全く異なる事業をやっているのですか?」と聞かれます。

しかし、機械とスマホアクセサリーは、「コーティング技術」という当社のコア技術から派生した兄弟事業なのです。一発大物狙いの兄貴の機械事業をコツコツ堅実に稼ぐ弟のスマホアクセサリー事業が支えているという感じでしょうか。

「Fusso SmartPhone」の開発秘話はまた別の機会に譲るとして、この商品はのちの当社の命運を握る事になります。というか、この商品が無ければ、当社はとっくに倒産していました。

なぜなら、初年度で7,000万円が必要な試算でしたが、結果的に資本金3,000万円でスタートする事になったからです。

機械事業での収入は1年後でなければ期待できませんので、それ以外の収入がなければ、または銀行借り入れが出来なければ、半年で倒産することが目に見えていました。

遠い先の夢と希望、しかしすぐ目の前には地獄が見え隠れする、社員にも家族にも打ち明けられない、なんとも言いようの無い恐怖と孤独を感じ、起業してしばらくはぐっすり眠れない夜が続きました。

社名 アピロス



若い頃から起業するなら「XXX」と決めた社名がありました。しかし改めて今の自分、この会社への想いなどを見つめ直して、ギリシャ語で「無限」を意味するアピロスとしました。
ゼロからスタートの当社は、何をやっても良い、無限に進化して行く、という想いを込めています。 多くの人に「あ行、Aから始まるのはリストの上にくるから良い」と言われて、その通りだなと気づきましたが、最初から「あ行」とか「A」に拘った訳ではありません。
Google翻訳で「無限」を色々な外国語に変換して「アピロス」というギリシャ語が一番響きが良かっただけです。

ちなみに、当社の英語表記はAPI Corporation(エイピーアイコーポレーション)です。
  アピロスだとApeirosのスペルが近いのですが、長ったらしく読みづらいので、直感的にAPIとしました。海外ではAPI(エイピーアイ)と呼ばれます。

会社設立



社名、資本金、創業メンバーも決まり、設立登記は2011年11月21日となりました。
まずは3名でスタートし、その後2名が少し遅れて参画、創業メンバーは私を含めて5名です。 残念ながら1名だけ体調を崩し退職してしまいましたが、その他の創業メンバーは8年目の今でも当社で力を発揮してくれています。

機械の開発陣が新潟在住の為、お金が足りないにもかかわらず、東京本社と新潟の開発ラボという2拠点を構える必要がありました。

東京はお台場のTHE SOHOビル、新潟は新潟県長岡市のベンチャー支援施設にそれぞれ事務所、研究所兼工場を開所しました。

自分で会社をやるなら海を見ながら仕事がしたい という私のわがままで、40平米というスモールオフィスながら窓際のデスクの前に東京湾が広がり、貨物船の往来や汽笛、遠くには羽田空港に離着陸する飛行機が見える素晴らしいロケーションの部屋を即決しました。

通勤が不便、ビルの周りに何もなく諸々不便、ということで社員の不評もあり、2018年8月に現在の白金オフィスに移転するまで7年ほどを過ごした思い出深い創業の地です。

そして思い立ってからほぼ1年後、2011年11月21日にアピロスの旅が始まりました。

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